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Q1:特許法173条5項にいう「再審の理由が,審決が確定した後に生じたとき」とは具体的にどういう場合か。
A:審決の確定後にその審判に関与した審判官について収賄罪の判決が確定したときが該当する。
 確定前には再審理由は存在しない。
 (逐条解説173条5項)

Q2:特許法173条6項にいう「当該審決が前にされた確定審決と抵触する場合」とは具体的にどういう場合か。
A:クレームについて訂正審判が請求され,まだ訂正審決が出る前に無効審判が請求された場合に,訂正容認審決がなされその審決が確定したにもかかわらず,無効審判請求が訂正確定前のクレームについてなされ,訂正確定前のクレームについて無効審決をし,確定した場合の再審理由が該当する。
 すなわち,当該審決である無効審決が,前にされた訂正確定審決と抵触する場合である。

  更問:では,無効審判では訂正審判との関係でどうすればよかったのか。
無効審判請求は,訂正前の特許請求の範囲についての無効理由を主張しているのであるから,訂正された特許請求の範囲を考慮せず,その前のままで無効審決となったのです。
訂正された特許請求の範囲を考慮すれば無効にできなかったのかもしれません。
この場合,無効審判合議体は,訂正審判が請求されていて,かつ訂正容認審決の存在を前提として審理を進めることができるのでしょうか。
出来ないと考えるべきでしょう。
なぜなら,行政処分により審理の対象が変更になったのだから,当然に請求は不適法なものとなると考えるのが自然でしょうし,最高裁判所でも同様の判断をしています。
訂正確定の効果に関する大径角形鋼管事件(最三判110309)で,「無効審決の取消しを求める訴訟の係属中に当該許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には当該無効審决を取り消さなければならないものと解するのが相当である。」と判断しています。
 この延長線上で考えるなら,「無効審判係属中に当該許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には当該無効審决は理由がないものとなる」でしょう。

Q3:冒認出願の真の権利者への,特許を受ける権利の移転請求は,特許権が成立する前の出願中においても可能か。

A:確認判決を得ることにより出願人の名義変更を特許庁に請求できる。
23年法改正解説 第42頁 「第2章冒認出願等に係る救済措置の整備」
C 出願人名義の変更・特許権の移転
 現行法上明文の規定はないが、裁判例によれば、真の権利者は、以下の手段をとることが可能である。
@ 特許権設定登録前の出願人名義変更真の権利者は、特許を受ける権利を有することの確認訴訟の確定判決を得ることにより、単独で冒認出願等の出願人名義を変更することが認められている。 H260430