No1 判定   最一430418 特許法71条
【要旨】  特許発明または実用新案の技術的範囲についての判定は,特許庁の単なる意見の表明であって,鑑定的性質を有するにとどまり,行政不服審査の対象となりえない。
【判示】  判定は,特許等に関する専門的な知識経験を有する3 名の審判官が公正な審理を経て行な うものではあるが,本来,特許発明又は実用新案の技術的範囲を明確にする確認的行為であって新たに特許権や実用新案権を設定したり設定されたこれらの権利に変更を加えるものではなく,また,法が,・・・判定に法的効果を与えることを前提とする規定を設けていないこと,他方,所論のごとく判定の結果が特許権等の侵害を理由とする差止請求や損害賠償請求等の訴訟において事実上尊重されることがあるとしても,これらの訴訟に対して既判力を及ぼすわけではなくして証拠資料となり得るに過ぎず,しかも,判定によって不利益を被る者は反証を挙げてその内容を争うことができ,裁判所もまたこれと異なる事実認定を行なうのを妨げられないことに思いをいたせば,それは,特許庁の単なる意見の表明であって,所詮,鑑定的性質を有するにとどまるものと解するのが相当である。
 特許法71 条所定の判定は,行政不服審査の対象としての行政庁の処分その他公権力の行使に当る行為に該当せず,従ってまた,実用新案法26 条により右特許法の規定を準用してなされた本件判定も,行政不服審査の対象となり得ない。
【解説】  「特許庁の判定は単なる意見の表明であり鑑定的性質を有するにとどまり,侵害訴訟で尊重されることがあっても,裁判において拘束力を有するわけではなく,不服申し立ての対象とならない。」
 この判定制度が余り利用されていない理由として,費用は4万円と格段に安く判定の結果も裁判所において尊重されているのだが,判定の内容が公報に掲載され遍く知れ渡ることから,争いのあることをユーザに知られたくなく,非公開を望む当事者に敬遠されていることが大きい。
【戻る】  【ホーム】