No18 バレル研磨事件
 :最三040428  特許法181 条2 項,行政事件訴訟法33 条1項
【要旨】  再度の審決取消訴訟において,取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決の認定判断を誤りであるとして,これを裏付けるため新たな立証をし,更には裁判所がこれを採用して,取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決を違法とすることは許されない。
【判示】  特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決が確定したときは,審判官は特許法181 条2項の規定に従い当該審判事件について更に審理を行い,審決をすることとなるが,審決取消訴訟は行政事件訴訟法の適用を受けるから,再度の審理ないし審決には,同法33 条1項の規定により,右取消判決の拘束力が及ぶ。
  そして,この拘束力は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから,審判官は取消判決の右認定判断に抵触する認定判断をすることは許されない。
 したがって,再度の審判手続において,審判官は,取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断につきこれを誤りであるとして従前と同様の主張を繰り返すこと,あるいは右主張を裏付けるための新たな立証をすることを許すべきではなく,審判官が取消判決の拘束力に従ってした審決は,その限りにおいて適法であり,再度の審決取消訴訟においてこれを違法とすることができないのは当然である。
  このように,再度の審決取消訴訟においては,審判官が当該取消判決の主文のよって来る理由を含めて拘束力を受けるものである以上,その拘束力に従ってされた再度の審決に対し関係当事者がこれを違法として非難することは,確定した取消判決の判断自体を違法として非難することにほかならず,再度の審決の違法(取消)事由たり得ないのである(取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断の当否それ自体は,再度の審決取消訴訟の審理の対象とならないのであるから,当事者が拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断を誤りであるとして従前と同様の主張を繰り返し,これを裏付けるための新たな立証をすることは,およそ無意味な訴訟活動というほかはな い)。
  2 以上に説示するところを特許無効審判事件の審決取消訴訟について具体的に考察すれば,特定の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたとはいえないとの理由により,審決の認定判断を誤りであるとしてこれが取り消されて確定した場合には,再度の審判手続に当該判決の拘束力が及ぶ結果,審判官は同一の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたと認定判断することは許されないのであり,したがって,再度の審決取消訴訟において,取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決の認定判断を誤りである(同一の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができた)として,これを裏付けるための新たな立証をし,更には裁判所がこれを採用して,取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決を違法とすることが許されないことは明らかである。

【解説】  
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