【要旨】 特許出願に係る明細書の原本を複製したマイクロフイルムは,頒布された刊行物である。 |
【判示】 オーストラリア国における特許出願に係る明細書の原本を複製したマイクロフイルムが,同国特許庁の本庁及び支所に備え付けられ,いつでも公衆がディスプレイスクリーンを使用してその内容を閲覧し,普通紙に複写してその複写物の交付を受けることができる状態におかれたときは,右マイクロフイルムは,実用新案法3条1項3号にいう「外国において頒布された刊行物」に該当する。 マイクロフイルムは,それ自体公衆に交付されるものではないが,前記オーストラリア国特許明細書に記載された情報を広く公衆に伝達することを目的として複製された明細書原本の複製物であって,この点明細書の内容を印刷した複製物となんら変わるところはなく,また,本願考案の実用新案登録出願前に,同国特許庁本庁及び支所において一般公衆による閲覧,複写の可能な状態におかれたものであって,頒布されたものということができるからである。右マイクロフイルムの部数が一般の印刷物と比較して少数にとどまることは,これをもって頒布された刊行物という妨げとなるものではないというべきである。 |
【解説】 「頒布された刊行物」は,マイクロフイルム自体を交付しなくても,その複写物の交付をすることができる状態であればよい。現在ではマイクロフイルムやマイクロフイッシュを見ることもなくなったがCD−ROMやネット上のデータについても同じことがいえることは,他の裁判例でも見られるとおりである。 |