【要旨】 侵害品と商標権者の商品との間には,市場において,当然には相互補完関係(需要者が侵害品を購入しなかった場合に商標権者の商品を購入するであろうという関係)が存在するということはできない。 |
【判示】 商標権は,商標それ自体に当然に商品価値が存在するのではなく,商品の出所たる企業等の営業上の信用等と結び付くことによってはじめて一定の価値が生ずる性質を有する点で,特許権,実用新案権及び意匠権などの他の工業所有権とは異なる。 商標権侵害があった場合,侵害品と商標権者の商品との間には,必ずしも性能や効用において同一性が存在するとは限らないから,侵害品と商標権者の商品との間には,市場において,当然には相互補完関係(需要者が侵害品を購入しなかった場合に商標権者の商品を購入するであろうという関係)が存在するということはできな い。 特許権侵害等があった場合,侵害品が売れたことは,当該特許権等を実施した製品についての需要が存在するということを意味するといっても差し支えないが,商標権侵害があった場合,侵害品が売れたからといって,当該商標を付した商品についての需要があったということを当然には意味しない。 そうとすると,商標法38条1項所定の「商標権者がその侵害行為がなければ販売することができた」か否かについては,商標権者が侵害品と同一の商品を販売(第三者に実施させる場合も含む。以下同じ。)しているか否か,販売している場合、その販売の態様はどのようなものであったか,当該商標と商品の出所たる企業の営業上の信用等とどの程度結びついていたか等を総合的に勘案して判断すべきである。 |
【解説】 特許権,実用新案権及び意匠権はそれ自体が財産的価値を有する。 |