【要旨】 商標登録の不使用取消審決の取消訴訟における当該登録商標の使用の事実の立証は,事実審の口頭弁論終結時に至るまで許される。 |
【判示】 商標登録の不便用取消審判で審理の対象となるのは,その審判請求の登録前三年以内における登録商標の使用の事実の存否であるが,その審決取消訴訟においては,右事実の立証は事実審の口頭弁論終結時に至るまで許されるものと解するのが相当である。
商標法50条2項本文は,商標登録の不便用取消審判の請求があった場合において,被請求人である商標権者が登録商標の使用の事実を証明しなければ,商標登録は取消しを免れない旨規定しているが,これは,登録商標の使用の事実をもって商標登録の取消しを免れるための要件とし,その存否の判断資料の収集につき商標権者にも責任の一端を分担させ,もって右審判における審判官の職権による証拠調べの負担を軽減させたものであり,商標権者が審決時において右使用の事実を証明したことをもって,右取消しを免れるための要件としたものではないと解されるから,右条項の規定をもってしても,前記判断を左右するものではない。 |
【解説】 ★ 裁判官坂上義夫の反対意見:商標権者は,商標法25条に基づき登録商標の使用を専有するという特典を与えられ,かたわらその使用の事実を最もよく知り又は知り得る立場にあって,容易に使用事実の証明をすることのできる者であるから,商標法50条1項に基づく不便用取消審判の請求があった場合には,被請求人(商標権者)は,自らの権利を守り商標登録の取消しを免れるためには,取消しの処分をなすべきか否かを決める審判において,前記要件にかかる登録商標使用の事実について証明することを要するとしたのが,商標法50条2項本文の法意であると思われ,かりにも,被請求人が審判において立証はおろか,応答すらしないというような場合にも,取消訴訟の事実審の口頭弁論終結まで新たな立証が許されるというような解釈は採るべきではない。 ところが,本件では,被上告人が有する本件商標登録について,上告人が商標法50条1項に基づく不使用取消審判を請求したのに対し,被請求人である被上告人が,審判において商標法50条2項の要件につき何ら主張,立証しなかったことから,請求どおり本件商標登録を取り消す旨の審決があったというのである。 正に,法が商標登録の取消しを免れようとする被請求人に求めた対応を全く欠いたものである。 かかる被請求人(被上告人)の権利を擁護する必要はないと思われ,処分の取消しを求める訴訟における一般原則に従って,原審において立証を許すべき事案であるとは考えられない。 しかるに,原審は,新たに本件登録商標の使用の事実についての立証を許し,登録商標の使用の事実が証明されたとして,本件審決を取り消したもので,原判決には,法令の解釈適用を誤り判決に影響を及ぼすことの明らかな違法があるといわねばならない。 ☆ この意見が常識と思うのですが・・・ |