No42 交通標語事件
 ぼく安心 東高131030 著作権法2 条1 項1 号
【要旨】  「ボク安心」と「ママの膝(ひざ)より チャイルドシート」との表現部分とを組み合わせた,全体としてのまとまりをもった5・7・5調の表現からなるスローガンは著作権法によって保護される創作性が認められる。
【判示】  原告スローガンに著作権法によって保護される創作性が認められるとすれば,それは,「ボク安心」との表現部分と「ママの膝(ひざ)より チャイルドシート」との表現部分とを組み合わせた,全体としてのまとまりをもった5・7・5調の表現のみにおいてであって,それ以外には認められないというべきである。
  原告スローガンや被告スローガンのような交通標語の著作物性の有無あるいはその同一性ないし類似性の範囲を判断するに当たっては,
 @表現一般について,ごく短いものであったり,ありふれた平凡なものであったりして,著作権法上の保護に値する思想ないし感情の創作的表現がみられないものは,そもそも著作物として保護され得ないものであること,
 A交通標語は,交通安全に関する主題(テーマ)を盛り込む必要性があり,かつ,交通標語としての簡明さ,分りやすさも求められることから,これを作成するに当たっては,その長さ及び内容において内在的に大きな制約があること,
 B交通標語は,もともと,なるべく多くの公衆に知られることをその本来の目的として作成されるものであること
(原告スローガンは,財団法人全日本交通安全協会による募集に応募した作品である。)を,十分考慮に入れて検討することが必要となるというべきである。
  そして,このような立場に立った場合には,交通標語には,著作物性(著作権法による保護に値する創作性)そのものが認められない場合も多く,それが認められる場合にも,その同一性ないし類似性の認められる範囲(著作権法による保護の及ぶ範囲)は,一般に狭いものとならざるを得ず,ときには,いわゆるデッドコピーの類の使用を禁止するだけにとどまることも少なくないものというべきである。

【解説】   
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