【要旨】 「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは,法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して,判断すべきである。 |
【判示】 著作権法15条1項は,法人等において,その業務に従事する者が指揮監督下における職務の遂行として法人等の発意に基づいて著作物を作成し,これが法人等の名義で公表されるという実態があることにかんがみて,同項所定の著作物の著作者を法人等とする旨を規定したものである。
同項の規定により法人等が著作者とされるためには,著作物を作成した者が「法人等の業務に 従事する者」であることを要する。 そして,法人等と雇用関係にある者がこれに当たることは明らかであるが,雇用関係の存否が争われた場合には,同項の「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは,法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに,法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して,判断すべきものと解するのが相当である。 被上告人は,1回目の来日の直後から,上告人の従業員宅に居住し,上告人のオフィスで作業を行い,上告人から毎月基本給名目で一定額の金銭の支払を受け,給料支払明細書も受領していたのであり,しかも,被上告人は,上告人の企画したアニメーション作品等に使用するものとして本件図画を作成したのである。 これらの事実は,被上告人が上告人の指揮監督下で労務を提供し,その対価として金銭の支払を受けていたことをうかがわせるものとみるべきである。 |
【解説】 |