【要旨】 カタログにおいて,書の著作物としての本質的な特徴,すなわち思想,感情の創作的な表現部分が再現されているということはできず,本件各作品が写された写真を掲載した行為は著作物である書の複製に当たるとはいえない。 |
【判示】 書は,本来的には情報伝達という実用的機能を担うものとして特定人の独占が許されない文字を素材として成り立っているという性格上,文字の基本的な形(字体,書体)による表現上の制約を伴うことは否定することができず,書として表現されているとしても,その字体や書体そのものに著作物性を見いだすことは一般的には困難であるから,書の著作物としての本質的な特徴,すなわち思想,感情の創作的な表現部分は,字体や書体のほか,これに付け加えられた書に特有の上記の美的要素に求めざるを得ない。
そして,著作物の複製とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することであって,写真は再製の一手段ではあるが(著作権法2条1項15号),書を写真により再製した場合に,その行為が美術の著作物としての書の複製に当たるといえるためには,一般人の通常の注意力を基準とした上,当該書の写真において,上記表現形式を通じ,単に字体や書体が再現されているにとどまらず,文字の形の独創性,線の美しさと微妙さ,文字群と余白の構成美,運筆の緩急と抑揚,墨色の冴えと変化,筆の勢いといった上記の美的要素を直接感得することができる程度に再現がされていることを要するものというべきである。 本件各カタログ中の本件各作品部分において,本件各作品の書の著作物としての本質的な特徴,すなわち思想,感情の創作的な表現部分が再現されているということはできず,本件各カタログに本件各作品が写された写真を掲載した被控訴人らの行為が,本件各作品の複製に当たるとはいえないというべきである。 |
【解説】 ★ 書と絵は同じ美術の著作物であっても大きく異なりますね。 |