知財検定の試験問題です
第40回 (2021/11/7実施)
2級学科
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問5
知財
ア〜エを比較して,
IPランドスケープ
に関して,
最も適切
と考えられるものはどれか。
選択肢
ア IPランドスケープとは,自社製品が他社特許に抵触しないようにするための
調査業務
のことである。
イ IPランドスケープにおいて,株式情報やマーケット情報等の
非特許情報
は不要である。
ウ IPランドスケープは,
研究開発戦略策定
のためだけに必要となるものである。
エ IPランドスケープとは,
知的財産に関する情報
を活用して事業の見通しを示す業務のことである。
正解 エ
ア:【×】
知財部が中心の業務では不十分
イ:【×】
経営の観点も必要
ウ:【×】
研究部門を超えた業務
エ:【○】
知財を事業,経営に生かす業務
【解説】
「IPランドスケープ(Intellectual Property Landscape =知財に関する環境と見通し)」とは,知財分析の手法と,同手法を生かした知財重視の経営戦略のことで,企業経営の中枢に据えることが求められる。
https://www.jpo.go.jp/support/general/chizai-jobobunseki-report.html
(別ウインドウ) 特許庁ホームページ
IPランドスケープを「経営戦略又は事業戦略の立案に際し,@経営・事業情報に知財(テクノロジー,ノウハウ,デザイン,ブランド等)情報を組み込んだ分析を実施し,Aその結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること」が必要である。
《IPランドスケープの成功要因》
特許庁資料より抜粋
旭化成
貝印
昭和電工
ダイセル
オプティム
塩野義
ブリヂストン
AGC
スリーダム
セイコーエプソン
ダイセル
帝人
パナソニック
富士フイルム
旭化成:
IPランドスケープの実施自体が目的とならないように,同社ではIPランドスケープの実施目的を以下の3つに定めている。
1)現行事業を優位に導く 2)新事業創出を支援 3)M&Aを事前・事後に支援
同社がこれまで取得した3万件の特許をマップ化し,旭化成のコアテクノロジーとしてCTOに提示したところ,同社が持つ多様な技術を活用したいというCTOのニーズに知財情報の戦略的活用がまさにマッチする結果となった。
役員会議,事業部門会議,その下の事業部会議の場に出向き,トップダウンで推進を図った。
IPランドスケープを実施するには,事業部門と知財部門との連携が必須であり,事業部門にIPランドスケープが事業戦略に役立つことを理解してもらう必要がある。同社の知財部門は従前より出願権利化業務,調査業務等を通した過去からの積み重ねで,事業部門からの信頼を得ていたことが成功要因の一つである。
各担当者のナレッジを見える化し,チームの作業効率を向上させている。
多くのツールを保有し,事業戦略の構築・見直しの際に立てる仮説に応じて,柔軟に適切なツールを使い分けるようにしている。
知財部長の強い働きかけにより,全社費用としてツールを確保した。
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貝印:
同社のIPランドスケープの定義としては,例えば「事業や商品の差別化ポイントの見える化」を行い,社内に対して進むべき道を指し示すなど,経営にとって重要な先見力の発揮のための,いわば「先が見える」ツールや手法と捉えている。
IPランドスケープ活動の基軸である,事業・開発と一体となった知財戦略の実行には,愚直に(他部門との)ミーティングを行う以外に王道はない,との考えのもと実施している。
知財協の委員会やセミナー講師等の外部で発信できる機会に積極的に参加することで,プレゼンスキルを磨いている。
知財情報の収集・解析には,グローバルな知財情報を効率的に収集・分析・表示できるツールを複数使っている。
同社他部門からの情報は,ミーティングと共に,各部門に出向いて情報を得ている。
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昭和電工:
IPランドスケープという用語が流行りだした際,従前より同社でも実施していた知財情報解析がなぜこのタイミングで流行るのかということを外部講師の力を得ながら再考したところ,知財情報の解析結果が利用されていなかったことの原因が,知財情報のデータに関する考察はしているものの,依頼者の仮説に対して何らかの示唆や提案ができていなかったためだということを見出した。
そこで,2016年頃から同社ではIPランドスケープを「依頼者の仮説をうまく導き出して,当該仮説に対する答えを提案するところまで実施する」と考え取り組んだところ,双方向のやりとりが行えるようになった。
依頼者の仮説に裏打ちを与える,依頼者が知らないことや気が付かなかったことを提示するといったことにより有用性を認めてもらった。
部門長クラスまで周知することの成功のコツは,属人的な社内のネットワークを使ってタイミング良くプレゼンテーションの機会を得ることであり,このようなフットワークの軽さが肝要である。
戦略マインドを持つ知財部長をはじめとする熟練者の考え方や発表等を見せるといったOJTにより,IPランドスケープの専任者はIPランドスケープに関するシナリオの立て方や結論の導出過程等を学んでいる。
ツールを使うコツやノウハウをグループの中で共有している。
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ダイセル:
従前より知財部門内に特許マップが有効に活用できていないという問題意識があった。 IPランドスケープを導入するにあたっては,知財部門や知財アナリストの人脈を活かし,先行する会社にヒアリングを実施し,他社からのIPランドスケープの知見を取り入れることにより早期の立上げを実現させた。
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富士通:
同社では,IPランドスケープ的な活動について,経営方針に倣って「パーパス実現に向けた事業課題や経営課題の解決に向けたインサイトをあらゆる知財情報から導き出して事業責任者や経営者に提供すること」と定義をしている。一般にランドスケープは俯瞰を意味すると思うが,同社では俯瞰することはゴールではなく課題の解決に向けたインサイトを導出することに拘っている。
それまで知財情報中心だった報告書を,ビジネス情報を主軸にして,そこに知財情報の分析というユニークな点を入れる形にしたところ,経営層や事業部門に着目してもらえるようになった。
知財部員がしっかりビジネスを理解して,それまで知財情報中心だった報告書を,ビジネス情報を主軸にして,そこに知財情報の分析というユニークな点を入れる形にしたところ,経営層や事業部門に着目してもらえるようになった。
表現が複雑で分かりづらいIPC分類,FIコードに対して内製のツールを駆使して可視化する等,事業部門にも知財マインドの醸成を図るような様々な取り組みを行っている。
複数のツールを組み合わせて分析する等,課題に応じて利用するツールの組み合わせ方を工夫している。
特許情報から抽出した方が良い情報と特許情報以外の情報から抽出した方が良い情報の区別を付け,欲しい情報の最適なソース源を整理しておくことが効果的である。
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オプティム:
同社のIPランドスケープのゴールイメージとしては,競合他社の動向を踏まえた知財情報の分析結果を経営陣と共有し,フィードバックを得ることと考えている。
社長,社長室長,知財担当者や企画担当者らと知財に対する戦略的な会議を毎月行っており,新規事業や主力事業について方針を定める社長から直接意見をもらう等,知財に関して経営層や部門間との連携を密に取れている。
知財担当者が個人で参加しているベンチャー知財の勉強会があり,そこで意見交換や交流を行っている。
IT関係企業の知財経験者の知見が必要となると考え,当該知見を有する特許事務所と連携を行っている。
社内ネットワークにポータルサイトを設け,同社の知財情報周知や知財に関する相談対応を行っている。
同社はITの技術や情報は持っているものの,各分野での産業の情報は持っていないため,協業する企業から必要な情報を入手している。
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塩野義:
役員にIPランドスケープを提携先や新規事業の対象範囲の選定に活用している他社の成功例を説明したところ,IPランドスケープの理解を得ることができた。
知財部門から他部門に対して,社内・社外のIPランドスケープの成功事例や具体的なプランを持ってIPランドスケープの活動を周知させて働きかけることで,他部門からIPランドスケープのニーズの掘り起こしを行っている。
IPランドスケープに関するセミナーや書籍を活用することで,分析手法等を学ぶとともに,OJTにより,IPランドスケープの知識・スキルを身につけている。
各社ツールの無料トライアル期間を活用し,利便性を確かめた上で一つのツールを選択した。
非知財情報は,Web上で収集する又は他部門から共有してもらっている。
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ブリヂストン:
経営トップが集まる会議体を活用し,その必要性を数回にわたって説明したところ理解を得ることができた。 従前の不足していた経営層の関心やニーズは,知財本部長が経営会議に出席することで把握するように努めている。この不足していた観点を補えるようになったことにより,経営層や事業部門にもIPランドスケープへの理解を得られるようになった。
事業部門をはじめとする他部門に対する情報発信に努めることでIPランドスケープの認知度を上げ,戦略を立てる時点でタイムリーに知財部門に対して声をかけてもらえるように努めている。
他部門との連携は,他部門の上層部の理解を得ることから始めた。その結果,関係部署に何かあった場合,当該上層部から「知財部門に相談したほうが良い。」と勧めてもらえるようになり,IPランドスケープの発注が来るようになった。
分析能力向上のためには,3i研究会に参加して研鑽するとともに,外部に委託し,その結果を内製のものと見比べる等,スキル向上に取り組んでいる。
導入時,類似するツールがある場合には独自の指標を設定して最適なツールを採用した。
ツールは用途によって使い分けている。戦略検討のレベルでは,特定のツールのアウトプットでは足らず,情報の組み合わせや質の担保のための文献の読込みといった作業が必要となるため,相当のコストがかかる。
サプライチェーンやビジネスの情報といった非知財情報は,他部門で開催する定期報告や情報連絡会に参加して適宜集めている。
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AGC:
経営層や事業部長に事例を説明すると共に,研究開発部門や事業部門に働きかけ,テーマを選定し実績を作りつつある。その結果,IPランドスケープに関して認知されつつある。
費用対効果を考慮して,トータルバランスに見合ったものを導入している。
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スリーダム:
技術者への月例の報告会で同社のビジョンを説明の上,必要なポートフォリオを見える化し,各技術者がどのように会社に寄与するかを明確化して,理解を深めている。
他部門との連携のため定期的な会議を設定して,知財部門が「提携先を探している」といった各部門からの課題等について傾聴し,知財部門がその課題に対して知財情報を用いてソリューションの提案をしている。
大企業ほどは予算がないため,厳選したツールを利用している。どのツールを使っても軸の取り方等の工夫をすれば似たようなことが出来る。
経営企画部門と密に連携を取れているため,経営企画部門から関連するマーケット情報等を随時得ることができる。
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セイコーエプソン:
連携強化しないといけない技術開発部門や経営戦略部門に知財担当者を異動させ,その異動者をキーパーソンにしてそれらの部門との連携を強化している。
調査分析結果を踏まえた経営層等へのレポートを上司が確認し,修正すべき箇所等を部下にフィードバックすることで教育・指導している。
解析ツールの進歩は最近著しいため,日々ウォッチングし,限られた予算の範囲で入れ替えを行い,目的に合わせて最適なツールを使うようにしている。
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ダイセル:
社内の認知度向上のため,各レイヤーに対して多面的かつ継続的に接触している。 他部門との連携については,年間の活動を振り返り,課題の確認を行うといった面談を各知財活動チームと年に一度実施している。
知的財産アナリストの資格の取得により,知財情報分析の基礎を培うスキルが身に付くとともに,アナリスト同士の人脈の構築ができるため,知的財産アナリストの資格の取得を励行している。
他部門からのIPランドスケープの依頼時には,3C情報,顧客のヒアリング情報や市場レポートなどをフレームワークに埋めてもらうことにより他部門からのマーケット情報をはじめとする非知財情報を収集している。
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帝人:
全事業部門に対してプロモーションを積極的に仕掛けた結果,8割程度の事業部門はIPランドスケープを経験している。新事業の立ち上げやアライアンス先の探索を行っている部門等,課題を有する部門についてはIPランドスケープの理解度が高い。
解析メニューの引き出しが増えれば,シナリオ策定の幅が広がる。このような観点から,複数の解析ツールを導入し,組み合わせて活用するようにしている。
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パナソニック:
他部門との関係構築には,実事例のサンプルや各事業フェーズに対して知財部門が貢献できる分析・提案をメニュー化して見せるといった働きかけを積極的に行っている。
実際に他部門との連携を行う際には,ニーズに対してどんなデータを使ってどうアプローチし,いつまでにどんなアウトプットを出すという提案書を最初に作り,他部門と意識合わせをしている。
外部コンサルやツールベンダー,大学のMBA講師等に指導を仰ぎ,実践力を養成し,分析・提案力を向上させた。
特許庁の特許庁知財金融促進事業を受託し,4年間で150社くらい中小企業の社長向けにヒアリングと評価書を提供することで,アウトプット力や実践力を磨いた。
IPランドスケープの専任チーム内で事例の共有を行い,スキルやノウハウが属人的にならないように工夫している。
一定の信頼関係がないと情報は得ることができないため,他部門との情報交換は,知財部門からの「ギブ・ギブ・ギブ」後に相手から「テイク」という形を心がけている。
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富士フイルム:
知財部門から事業に貢献する情報発信を続けたことにより,事業部門にも知財マインドが醸成されるとともに,事業部門との信頼関係を構築することができた。
知財担当者のリーダーシップ育成においては,知財戦略等の経営層に対するプレゼンテーションの機会を活用してOJTの場数を増やすことが肝要である。
ツールは日進月歩で良くなるので,より良いものを導入できるように日常的にウオッチして最適なものを適宜採用している。
市販のツールだけではなく,自前でもAI・機械学習を使ったツールを開発して活用している。自前のツールは効率化を目的としており,例えば他社特許を読むときの査読時間を短縮できている。
非知財情報は,各事業部門から担当する知財部員が収集している。
外部の調査機関に発注する場合は,丸投げという形ではなく具体的な調査項目を作成した上で発注している。
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